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精神疾患労災認定、審査迅速化へ新基準 労働基準監督署へ通達

投稿日時: 2012-01-12 08:27:08 (2384 ヒット)

以下、引用です。

 精神疾患による労災の申請が急増していることを受け、厚労省は新しい認定基準を全国の労働基準監督署に近く通達する。

2カ月連続で月120時間以上の残業をした場合は「強い心理的負荷」だったと判断する

など数値や具体例を明確にして審査を迅速化するのが狙い。しかし、関係者から「基準が厳しすぎる」「残業時間ばかりが重視されないか」と疑問の声も出ている。

 職場での人間関係のトラブルや過労で精神疾患になったとして労災申請をした人は2010年度が1181人で、00年度の約6倍近い。しかし認定率は3割を切る上、1件の審査に平均約8.6カ月掛かっており、ほかの疾病の平均6.3カ月よりも長い。

 脳・心臓疾患の労災認定では「発症前1カ月間で残業が100時間」といった数値の目安が設けられているが、精神疾患ではこうした数値を示していない。このため厚労省は一昨年10月に専門家による検討会を発足。昨年11月に新基準をつくった。

新基準では>>

1カ月に160時間を超える残業原因で精神疾患になった場合、それだけで労災認定すると規定。このほか「強」「中」「弱」の心理的負荷の具体例を詳細に記し、その組み合わせなどで総合的に判断する。

 また、現在は精神科医による検討会で全ての申請事例を審査しているが、今後は判断が難しい事例に限るなど審査方法も改める。

 「正確な労働時間が記録されてない場合はどうするのか」。1999年に自殺した小児科医、中原利郎さん(当時(44))の妻、のり子さん(55)は懸念する。亡くなる直前の中原さんは月8回の宿直勤務をこなして、36時間連続で働くことも。「ぎりぎりまで追い詰められていた」と、のり子さん。しかし新宿労働基準監督署は03年、「鬱病と仕事に因果関係はない」と労災申請を却下。

 のり子さんは「鬱病発症は多忙な仕事が原因」「勤務実態も正しく認定されていない」として処分取り消しを求め提訴。東京地裁は07年、自殺は過労が原因と認め、労基署の処分を取り消した。

 「精神疾患は体の病気と比べて因果関係が分かりづらい。個々の事情を丁寧に調べる必要もあり、審査が早ければいいというものではない」と、のり子さんは訴える。

 鬱病や労災問題などに詳しい代々木病院(東京)の天笠崇医師は「曖昧だった認定に明確な基準を導入したことは大きな意味があり、申請を処理する労基署の負担軽減にもつながる」と評価する。

 ただ「脳・心臓疾患に比べ精神疾患はまだまだ基準が厳しい。残業時間だけが判断材料ではないことは分かるが、このままでは数字が独り歩きする恐れもある」と指摘している。

(1月10日 ニュース)